2015-04-10から1日間の記事一覧

未来2015年3月号

ハルとシュラ、姉妹のなまへのやうに呼ぶ しづかな声でもう一度呼ぶ 空に釘うちつける音ききながら日曜おそい朝に目覚める 妹よあなたにあげられるもののすべてのなかに兄がゐること ショベルカーのアーム動くを見下ろしぬあれはあなたを抱けない腕 知つてゐ…

未来2015年2月号

いくつもの目が開いては閉ぢるのを見てゐたあめの湖面をまへに 真向かひて頬とほほ寄せあふときになにか刺し違へてゐるやうな 水とわたしが出会ふべきただ一点に唇よせてゆくウォータークーラー カーテンをあけて眠ればこの部屋の夜はうつすら輝いてゐる よ…

未来2015年1月号

冬の陽のやはらかく差す図書館にわたしが目覚めるのを待つてゐた ありつたけの海を満たした眼にはこの街の灯はひどく寂しい くれなゐの金魚ほのほの如く揺れ蓮の葉蔭に消えてしまへり ここにゐないひとの上着の両腕が椅子の後ろに結ばれてゐる 新宿を雨後の…

未来2014年12月号

「ライティングβ」 吸ひながらまた吐きながらいちにちは余白の多いページのやうだ 傘の字はとつても差しやすさうなのに雨のわたしの手に傘がない 嗅覚が鈍くなつて、と書くときのまたたく視野のかたすみに犬 書くことは足を向けるといふことで川の向かうの工…