未来2013年10月号

「夕立ちよ」 夕立ちよ 美しいものことごとくこの世のそとに溢れてしまふ 花が降ることをあなたに言ふときに花降るとしか言へないことを 玉こんにやくの群れに右手を沈ませる不埒なことを考へたまま 腎臓に胞ありと告げられし日より水満ちる胞を抱きてねむる…

いまドキ語訳越中万葉

北日本新聞社さんが出されている『いまドキ語訳越中万葉』という本に、Twitter編として2首載せていただきました。(まだ画像がないようなのですが、いずれ貼ります)大伴家持ほかの「越中万葉」の作品、歌人のエッセイ、いまドキ語訳した越中万葉短歌、とい…

未来2013年9月号

「ゐない人」 見立てとは美しい森どこからか知らない鳥の声が聞こえる 遥かなる午睡の果てに泳ぎつくロングアイランドアイスティーへと 日溜まりは踊る あなたの爪先を十数センチ離れた床で まぶしさも眩暈もとうにうしなつて死ぬのはとてもさびしいことだ …

第五十六回短歌研究新人賞(佳作)

「短歌研究」2013年9月号に、第五十六回短歌研究新人賞佳作として五首を掲載していただきました。 薔薇(ばら)ではなく薔薇(さうび)と呼ばむ兵士の貌になりたるあなたのことを ゆく人をいづこに送りだす船かこの世のほかに桟橋はなく 吹く風が鼻をさかひ…

うたらば 第49回テーマ「夏」

短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」 ブログパーツに、歌を採用していただきました。 この夏のひとみな美(は)しくBCGの痕(あと)誇らしげに晒してゆきぬ

うたらば 第48回テーマ「数字」

短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」 ブログパーツに、歌を採用していただきました。 貯水塔の上で名前を呼びあえば二親等にもなりえる君だ 一回遅れてます。あとはてなブログにしたので、今さらですが、うたらばブログパーツをやっと付けることができま…

未来2013年8月号

「止まない雨」 止む雨と止まない雨を嗅ぎわける犬の襟首うしろより抱く 二人では溢れてしまふ風呂の湯のその過剰さをときに憎めり 貝殻の耳にくちびる近づけてさざ波のやうに歌つてあげる きみの眠るベッドを抜けて強風に倒れた自転車起こしにゆく 思ひ出は…

リチェルカーレのその後で

いや、まだ売っておりますけれども。こちら『眩暈リチェルカーレ』、内山晶太さんと師である黒瀬珂瀾さんにもお渡しして、ありがたいことに読んでいただきました。そして、Twitterでいただいたメッセージをこちらに載せさせていただきます。 飯田彩乃さんの…

うたつかい2013年7月号

うたつかい -短歌な月刊zine- 「夢、モノ・がたり」 きみの通つた記憶のKindergarten(キンダーガーテン)に永遠(とは)にましろき雪の降るゆめ 鴨川のカップルたちが引きあつた垂直二等分線の夢 軸足に体重を載せる投球のフォームのままにきみ殴るゆめ 段…

未来2013年7月号

「水の川」 水際のやうな月曜日を離り週末といふ対岸はみず 社屋から鳩の飛びたつ瞬間をペテン師の瞳で立ち尽くしたり かの土地をポスト・オフィスと呼ぶときに吹きつ晒しの原野はありぬ 真夜中に羅針盤うち鳴らしつつ踊り場のうへ踊るダンスを 憤懣はひどく…

初期作品集「眩暈リチェルカーレ」の初版分を売りきったので再版しました。

なんという雑なタイトルだろう… Twitterでさんざん告知をしまくったのでご存知の方がほとんどだと思いますが、「眩暈リチェルカーレ」という初期作品集を春先につくって文フリで販売しました。2010~2012年に飯田彩乃がつくった短歌133首を収録しています。 …

#てきとう物理講座(第一回/ニュートン力学)

Twitterにて7月2日深夜に開講していました。そのログです。 第一回などと書いていますが続く気はあまりしません。 運動の第一法則は慣性の法則ともいいます。慣性は惰性とも言い換えられます(本当)。なにかよそから力を与えられない限り、止まったままのも…

うたつかい2013年4月号

うたつかい -短歌な月刊zine- 「港(ハーバー)にて」 秘密裏に春の径(こみち)をひたひたとゆけばひかりは雪を真似する 水の面(おもて)みずの裏より眺むればなべてこの世はあやうく揺れて 君はきみの過去を泳いできたんだね ほとりの足跡(あと)は乾か…

歌会たかまがはら2013年6月号でいただいた質問に答えました

先日6月15日、歌会たかまがはら2013年6月号のゲストに呼んでいただきました。歌会たかまがはら2013年6月号の募集の様子 歌会たかまがはら2013年6月号の選歌の結果テーマ「酒」で、計246首の短歌を投稿していただきました。本当にどうもありがとうございまし…

うたらば 第47回テーマ「強」

短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」 ブログパーツに、歌を採用していただきました。 わたくしの指も噛み切れないくせにあなたが持っている強い牙

未来2013年6月号

「ふもとに眠る」 部屋といふどこかちひさき水槽のオブジェの内にあなたは住まふ あしの指の先よりみづに浸すときこゑを聞きたり くるしき水の 踵よりやはらかき水したたらせ春のゆるみよいづこより来る 水紋のごとくシーツの広まりて眠りの岸へ辿り着きたり…

最近読んでいるまんが

「黒子のバスケ」、既刊22巻。 「黄瀬はハイスペック水谷」というきりさんの一言で読みだしたんですが(飲み会でiPhoneにメモしてた)、ハイスペックどころの話ではないと思います。あと、黄瀬のほうがもっとワンコ。ハイスペックワンコ。 テニプリを思い出…

未来2013年5月号

「庭のこと」 花の庭 わたしが探してまはるのはゾーリンゲンのあのばかのこと わたくしは遂にほどけぬ蛇(くちなは)の子どもを捨てにゆくところです この庭に巻き貝が埋もれゐることのこはさをきみに全身で言ふ 足もとの泉が映さないものに気づかず君はその…

うたらば 第46回テーマ「金」

短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」 ブログパーツに、歌を採用していただきました。 アイス売りの声すれば夏の五時がきて金曜日なら笑み交わしあう

うたらば 第44回テーマ「飛」

短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」 ブログパーツに、歌を採用していただきました。 世界ってけっこう広かったんだって飛んだその瞬間に気づいた

うたつかい2013年2月号

うたつかい -短歌な月刊zine- 「光る駅」 わたしたちは冬に生まれてひややかな指に触れないようにふれあう ポケットまでは追いかけてこない手のひらを追いそうになり しまう手のひら 耳もとで何度も呼んでいるうちにあなたの名前を忘れてしまう 光る駅に近づ…

未来2013年4月号

「星のあひ」 空に浮く数多の船がみな君を目がけて飛んでゆくやうな午後 水面をひつたりと圧す舟底のごときレンズを目に嵌めてゆく 地に降りるまぎはの鳩の胴体のあらはなる細さに吸ひ寄せられぬ 樹も駅もおのづから光る冬街を影のふたりは寄り添はずゆく 君…

うたらば 第43回テーマ「別」

短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」 ブログパーツに、歌を採用していただきました。 コーヒーにミルク傾けかき混ぜる拍子にあなたが好きだった、と言う

うたらば 第42回テーマ「チョコ」

短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」 ブログパーツに、歌を採用していただきました。 甘いだけの恋がしたいのに唇を汚しあうためチョコを咥える バレンタインあたりにTwitterでお祭りになっていたBL短歌より。

未来2013年3月号

「花の名前」 まぶしくて冷たい朝(あした) 二親等の遠さで君と呼びあつてゐる ペットショップに九官鳥がゐたことのない町に住み成人となる 幾たびも花を交へてする話 きみは名前がほしかつたのか 花束を手にした人とすれ違ふ 祈りの数だけ戦場がある ゆふ…

うたらば vol.07 テーマ「鍵」

短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」 冊子に歌を採用していただきました。三回連続で写真ページでの採用です。しかも今回はトップバッター。うれしいです。 春の午後をひたひた眠る妹にいくつか鍵をかけて出かける 自他ともに認めるよく眠る姉妹なので、…

うたらば 第41回テーマ「短」

短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」 ブログパーツに、歌を採用していただきました。 僕らよりも短き生を駆けぬける猫に散らない花の名前を

未来2013年2月号

「春の死」 時差のない言葉をきみと交はしつつ君の町より雨雲はくる 夜明け前の会話はときに砂まじり 風の向かうにあなたはゐたが ひとなんてみいんなおろかと言ふけれどそのスイッチを押してはいけない 父君は、母君はと問はれるときにわたしを溢れてしまふ…

Desigual

Desigualの品揃えがいいという青山のセレクトショップに行くつもりで、妹に言われるがまま原宿で待ち合わせをしたら、あれよあれよという間に明治通りにある日本初の旗艦店へ連れて行かれた。本気でびっくりした…まさかあるなんて思わなかった。 パワーあふ…

鳥はいかなる時に叫ぶや

重くゆるく林のなかをくだる影鳥はいかなる時に叫ぶや(高安国世) 2002年冬、朝日新聞の大岡信のコラム「折々のうた」にこの歌が載っていた。わたしは小さなこの記事を切り取って、長いこと机のシートの下に入れていた。高校3年生、受験のさなかの頃だった…