同盟を組む

新人研修中、新入社員の一人と同盟を組んだ。その名も、「胃下垂同盟」。胃がちょっと下の方にあって、そのお陰で人よりちょっと痩せているという、それだけの同盟である。特に活動はない。
そもそも、胃下垂であるというだけなら単に「お、同志」と思うだけだ。同盟を組むほどの連帯感は生まれない。が、胃下垂は重大なリスクを持っているのである。
腹が鳴るのだ。食後と就寝前、特に。
何を隠そう私もその新入社員に言われて気づいたのだが、そういえばよくキョルンキョルン鳴っている。眠りに就く前、もの悲しそうに自分の腹が鳴っているのを聞くのはとてもやるせない気持ちになる。そしてもちろん、鳴るのは一人でいる時とは限らない。いかに腹の持ち主が人生の重要な局面を迎えていようが、鳴る時は鳴る。時と場合によっては死にたくなるほど恥ずかしい。笑って流してくれる人が好きです。
そういえば私の祖母は身長150センチ台で体重30キロ台だが、同じ部屋で寝たときは妹ともども眠れないくらいキュワンキュワン鳴っていた(その時は手術の後遺症かと思っていた)。年齢と共に音量が増していく仕組みだとしたら恐ろしい。
そして今日、新しい部署の飲み会でとてもほっそりした男の子に会った。たぶんあの子はいずれ肺に穴が開くと思う*1、そのくらい細い男の子。自信を持って私は尋ねた。
胃下垂だよね?」
「いや、よく…」
「食べても太らないでしょ?」
「はい」
「食べたあと、ちょっとお腹の下のとこがポッコリしない?」
「…します」
「よくお腹鳴らない?」
「……鳴ります」
「あなたは、胃下垂です。」
私の宣言とともに、ここに新たな同志が誕生した。別に新入社員の彼に報告もしないしやっぱり何の活動もしないが、そもそも胃下垂で困っているかというと別にそうでもないのである。年の功か何なのか最近は腹の音も開き直ってるし、そもそも真剣な場で腹の音で萎えるような人間などこちらから願い下げだ。胃下垂の人間は腹の音ごと愛してナンボである。というか、食べても太らないって結構なアドバンテージだと思うしね。ダイエット(というか食における節制)の仕方を知らないまま中年に突入するのはちょっと怖いし、痩せた身体はコンプレックスだったりするけど。
それにしても、あの神田うのも胃下垂なんだそうだ。彼女のお腹もふとしたところでキュルキュル鳴ってるんだと思うと、なんだか少し楽しい気持ちになってくる。

*1:痩せ型の男性は特に肺気胸になりやすい。が、私もかかってしまった