未来2012年10月号

「ほほづゑの千年」
はつ恋は水際のごとく潮騒に耳を浸せば沁みてゆく部屋
立て膝で「野ばら」を歌ふ窓ぎわの君はをみなを喉(のみど)に棲まはせ
ほほづゑの千年ののち立ち上がり歌ひはじめる寿歌のこと
臓器(オーガン)をわさわさ揺らしつつ笑ふ人の子らとすれ違ふ休日
古いふるい子守唄甦るときほころびてゆくわたしの獣
夕まぐれうな垂れてあるガーベラが花瓶をしかと立たせてをりぬ
腐るまでの道のどこかにわたしたちこの実を置いてゆくのでせうね
切つ先をゆくのはこはい後悔の後ろに立ちて手を添へてやる
カーテンに向かつて話しかけてゐる朝がどこにもゐない気がする

今月号から始まった、黒瀬珂瀾選歌欄「陸から海へ」に所属することにしました。
思えば半年くらいうだうだと考えていて、ラジオでまでその迷いをぶつけたものですが、収まるところに収まったのかなあと、まずはほっとしています*1
東先生にしても、珂瀾さんにしても、わたしは好きな歌人の方のところで教えを請うことができていて、ほんとうに恵まれていると思います。目下の目標は、欠詠をしないこと。ひと月に十首、大事に詠んでいきたいです。
あ、この号で、はじめて割付に参加しました。

*1:加藤治郎さんにはその後お会いして、名乗ったあとに「珂瀾さんのところに入ります」とお伝えしたら「えええ!?」と驚かれてしまいましたが…いやなんだか申し訳ない