未来2012年11月号

「縺れゆく舌」
人工衛星(サテライト)はつかに過ぎるみづうみの底ひにをのことをみなの眠る
大母(おほはは)の予言に縺れゆく舌よ<おまへは言葉にたましひを売る>
限りなき溺死の記憶湛へつつ街はまたぞろ夜に消えたり
わたくしの体に憩ふ獣(けだもの)も朝には顔を纏ひ出でゆく
肺さへも侵されてゆくこの夜をどこかで揺れてゐるサイリウム
暁光に手ゆび翳せば眠る汝(な)のくびすぢに影おちゆくばかり
ゆびさきに記憶あつめるこのひとのいのちの器くだく日のため
朝焼けの速度をなにで知るだらう環状線は光に塗(まみ)れ
たましひよおまへは鳥だ鳥なのだ醜く生きて生き延びて翔べ