未来2012年12月号

「隣りあふ海」
運命を手繰る右手と突き放す左手の間にわが置かれをり
いつしゆんの背(せな)ひからせて鈍色の魚は真水の奥に消えにき
窓ガラスの空が映つてゐる部分だけを見つめてきたやうな人
たましひの代理人たる少女ゐて空の鳥籠ゆらしてをりぬ
波に目が吸ひ寄せられてゐるときに足の裏から逃げてゆく砂
君がゐた海のはなしを貝殻の耳からそつと聞かせてほしい
水温のちがふ流れを持ち寄つて僕たちはいま隣りあふ海
わたしたちを隔ててゐたのは海ぢやなくたつた二枚の窓だつたのか
みづからの光のなかに消えてゆく夏の夜明けの散水車たち

三、四、七首目がよい、とのこと。ただし常道的な言葉が混じる傾向があるので注意。それから、わたしは近代短歌を読むこと。
発行所で服部さんにお会いした号。