未来2013年7月号

「水の川」
水際のやうな月曜日を離り週末といふ対岸はみず
社屋から鳩の飛びたつ瞬間をペテン師の瞳で立ち尽くしたり
かの土地をポスト・オフィスと呼ぶときに吹きつ晒しの原野はありぬ
真夜中に羅針盤うち鳴らしつつ踊り場のうへ踊るダンスを
憤懣はひどく遅れて立ち上がりかはたれ時の主語となりゆく
水の川をビニルのごとき鳥が行きあれは恩寵なのだらうね、と
脳漿に浮きつ沈みつする記憶ときをり花とふれあひながら
王国の沈みゆく日の残照はおまへの貌を磨いてゆくね
雨脚のはやまる夜は水の香に満ちゆくからだ君にとどける
万物にゆるされるその時までを面に映してゐる水鏡

海彼通信にて、「幻想的でありつつ、どこか現実の生活の香りを纏わせている。作者の〈生〉が詩情に昇華した真摯な作と思います。」と書いていただきました。掲載順に意味はないということを予め言われていますが、いちばん最初にきたのは今月が初めてでした。