未来2013年3月号

「花の名前」
まぶしくて冷たい朝(あした) 二親等の遠さで君と呼びあつてゐる
ペットショップに九官鳥がゐたことのない町に住み成人となる
幾たびも花を交へてする話 きみは名前がほしかつたのか
花束を手にした人とすれ違ふ 祈りの数だけ戦場がある
ゆふぐれてゐる午後二時の冬の陽を妹たちが駆けてゆく丘
願ふすべてを叶へるために道といふ道を曲がらずゆける町まで
青春の残り湯に身をひたしつつ許せぬきはに波寄せてゐる
雪の夜をひたに震ふる室外機ぼくの意識をのがれられずに
崩さずにそつと飾った窓際のきみの名前はまだ美しい

割付時、発行所のドアがなかなか開かなかった3月号。
六首目は心に訴える力があるが、四首目はテーマが二つに割れているように思う、とのこと。八首めは添削ありでした。
角田純さんに工房月旦で2012年12月号の「みづからの光のなかに消えてゆく夏の夜明けの散水車たち」を取り上げていただきました。ありがとうございます。