未来2013年4月号

「星のあひ」
空に浮く数多の船がみな君を目がけて飛んでゆくやうな午後
水面をひつたりと圧す舟底のごときレンズを目に嵌めてゆく
地に降りるまぎはの鳩の胴体のあらはなる細さに吸ひ寄せられぬ
樹も駅もおのづから光る冬街を影のふたりは寄り添はずゆく
君の眼を海と見る日に灯台のつよい光が飛びこんでくる
横抱きに星座をかかへその内を真冬のみづで満たしてみたし
惑星を平らかにして今宵きみは一夜限りの安眠を得る
鮟鱇の灯りを門に点すときわたしの家は君に近づく
選ぶとは贅沢すぎる選択肢ふたつの鍋に火を入れてゐる

七首目の不思議な実感。他の歌もとてもいいが、語彙の種類が統一され過ぎている。
松井多絵子さんの新年会歌会記に歌を載せていただいています。
割付日は真里子ちゃんの授賞式の翌日。