未来2014年1月号

「春の柩(後)」
売店のビニール傘を購へば増えてしまひぬ遺品ひとつが
空にかほ隠しつつゆくわたしたちはかへすがへすも雨の標的
水の匂ひ満ちるからだの重たくて心をそとに引き摺つてゆく
動脈に絡め取られしこのからだ遠流の果てに沈みゆくべし
同じ高さでどこまでも続くナトリウム灯(ランプ)あるいはあなたの悲鳴
死んでゐる人みたいだねと言ひながら春の柩に腰かけてゐる
うつくしき骨しまひたるひとのゐてその美しさゆゑに焼かれき
花を病み熱をわずらふ春の宵あなたはかほを失くしてしまふ
水辺に佇つ樹木になつてめぐる季節ごとにあなたに花を散らして
まぼろしの指先のうへに乗る鳥が向きたるはうを未来とおもふ

工房月旦にて、桝屋善成さんに2013年10月号の「夕立ちよ 美しいものことごとくこの世のそとに溢れてしまふ」について評をいただいています。毎月取り上げていただいていて、本当に有難い限りです。

また今月号では、「Loose-Leaf」というページで2013年11月に行われた文学フリマについて書かせていただいています。『中東短歌』『一角』『共有結晶』『率』『秘密基地女子』『タンカドウラク』の歌を引きながら駆け足で紹介をしました。
依頼から〆切までが一週間弱だったのですが、何だったっけ、なにか他の〆切と重なっていて、ぴいぴい言いながら書いていたような気がします。