未来2014年2月号

「あやとりの川底」
魚たちが渦巻く午後の押し入れにひつたりと耳を寄せたまま待つ
冷蔵庫を満たして満たされることの星よりはやく欠けてゆく月
ゆつくりと小指で浚ふあやとりの川底にあるそのさみしさを
全身をくまなく濡らしわたしたち記憶のやうに眠つてしまふ
わたくしの小鳥かがやく肋骨といふ籠のなか 微睡みながら
月光が指のあひだを伝ふとき世界は眼差しに満ちてゐる
釣り針を口にふくみてたゆたひぬ基礎体温のうねりの中に
グラウンドは水びたしの空マウンドに打ち上げられた魚が跳ねる
くびすぢを明るい星にさらしては未来のことを話したりする
どの扉も閉ぢる気配がないやうな春のひかりにつま先を置く

工房月旦にて、桝屋善成さんに2013年11月号の「咲く速さを枯れる速さが追ひこして花は盛りを通りすぎたり」について評をいただいています。
また、古川順子さんによる10月号アンソロジーに、「夕立ちよ 美しいものことごとくこの世のそとに溢れてしまふ」を再録していただいています。どうもありがとうございます。