未来2014年5月号

「五月の人」
ぐらぐらと溢れるほどに湯を沸かす 受けとめるのに要るのは力
駆けつけた家族がつどふ部屋に起き金環食をぜんゐんで見る
目蓋をゆつたり閉ぢてむかふなら千年万年ねむりの栄華
最後ですと促されるまま祖母の手がつめたき額、ひたひにふれる
それは強いつよいイメージ 燃え残る雑誌の横のうす桃の骨
関西の骨壷いたくちひさくて残りの祖父はどこへゆくのか
餌台のずつと傾いでゐる庭で母ともいでは食べる木苺
海のやうに広い背中のあなたまで辿り着けない日もあるのだと
はつなつの緑のなかにあゆみ去る祖父よあなたは五月の人だ

自分の載っていた頁がさながら挽歌特集のようだった。忙しくて今年も法事に行けなかった代わり、にはならないのですが。
蝦名泰洋・野樹かずみ歌集『短歌両吟 天体育ち』の書評を書かせていただきました。また、工房月旦にて、山木礼子さんに2014年2月号の「冷蔵庫を満たして満たされることの星よりはやく欠けてゆく月」について評をいただいています。