未来2014年6月号

「祈りにも似たしぐさ」
白きカラーの茎にくちびる当てながら横笛のごと構へてゐたり
少年が投げあげて手に取るものを過ぎゆくわれはふたたびは見ず
地下鉄のホームに響くアナウンス男女のこゑがからみあふなり
イヤフォンのコードはつねに絡まつて祈りにも似たしぐさでほぐす
やさしさは薄水色のスカートでしやがみこんだらもう水たまり
わたくしがかつては水であつたことを洗ひ流して降る窓のそと
白黒をつけるほかない盤上ですれ違ひざまほほゑみあひぬ
こくこくと水位の下がるガーベラの一輪挿しをキッチンに置く
吹き抜けるここは回廊 手の内もそともあなたに晒してみせる

江田浩司さんによる2月号アンソロジーに、「月光が指のあひだを伝ふとき世界は眼差しに満ちてゐる」を再録していただいています。どうもありがとうございます。