未来2014年9月号

「あめのひα」
雨音は性欲に似てカーテンをひらく右手を掴む左手
いちまいづつ裸身へ近づきゆくひとの描く弧線をあかず追ひたり
声の扉を押してひらいて夜にしかをらぬわたしに会ひに来るのだ
隠沼をいくつも越えてきし君の冷たく湿る足裏に触れる
君の掌が肌をすべるわたくしの右半身から鳥にするため
夜と呼ぶ水槽にいまわれらゐて唇はつけたりつけなかつたり
ぬるくぬるく君をこの身へ沈めをり絵の具の匂ひこもれる夜に
降るらしい窓見ざるまま君の耳のおもても内もしとどに濡らす
唇はちひさな丘よのぼつたらあとはくだつてゆくだけなのよ
どこへゆく木の舟だらう櫂を漕ぐやうにをりをり軋むベッドは


みらいプラザに載せていただきました。内容は、ネットプリント「ぺんぎんぱんつ」に掲載していただいた「あめのひ」が元になっています。一首だけ付け加えているのでαです。