未来2014年10月号

「季節を送る」
カフェラテを豆乳ラテに変へるほどのしづけさ 街に雨がきてゐる
たましひの鳥籠に飼ふふくろふと目を合はせては目を逸らしあふ
昼も夜も草原に晒されてゐるわたしの眼窩に溜まる雨水(うすい)よ
真夜中の明治通りをさらさらとビーズのやうなタクシーでゆく
夜の織る縦横糸のあひだから漏れるひかりに照らされてゐる
右耳からときをり砂をこぼしつつ君と暮らした街を想つた
閉ぢてゐる瞼を丘と思ふとき君のあかるき息吹きくだる
胸底に一挺の銃ゆつくりと沈みゆくなら手を伸ばしたり
左手に載せたボールを右腕へ転がすやうに 季節を送る
君にあふまへのわたしは今もまだ海を眺めてゐるのだらうか


工房月旦にて、山木礼子さんに2014年7月号の「草原に〜」の評をいただいています。