未来2014年11月号

「あたたかい海」
耳もとで髪を結はへるああこれはよこがほといふ表情だらう
千の春、夏、秋といふ少女きて冬の子どもに未だ会はざり
午後よりもながい永遠などはなくあなたのこゑの斜面(なだり)に眠る
感情をあなたに言へば感情はわたしのものになつてしまふよ
裾をつまむ指さきそつと離されていまスカートを溢れだす花
手を繋ぎ眠る ねむりの入り口の手前にて手を振つて別れる
宵闇に沈み込むほど美しく青き東横インのネオンよ
樹の枝と樹の枝が打ちつづく夜あなたはもつとも深き眠りへ
あなたから流れる河がわたしにも繋がるやうな あたたかい海