未来2015年3月号

ハルとシュラ、姉妹のなまへのやうに呼ぶ しづかな声でもう一度呼ぶ
空に釘うちつける音ききながら日曜おそい朝に目覚める
妹よあなたにあげられるもののすべてのなかに兄がゐること
ショベルカーのアーム動くを見下ろしぬあれはあなたを抱けない腕
知つてゐるあなたが誰かわかつてゐるあなたが生きていまここにゐる
ゆふぐれよお前の目蓋に触れながらこの世は昏くなりゆくのだね
この街をやがてちひさく折りたたみ胸に仕舞つてこの街を出る
かうやつてどんなに強く束ねてもすべての腕は燃えるのだから
ページ捲(く)るやうに扉をあけてゆく ひかりの中を光へあゆむ

工房月旦にて、大田美和さんに2014年12月号の「嗅覚が〜」の評をいただいています。