未来2015年5月号

「スプリング・オブ・ライフδ」
木香薔薇の配線は入り組みながらすべての花を灯してゐたり
にはたづみに降る雨のひとつ一粒が底の澱みを巻きあげてゐる
さんずいのごとき飛沫を蹴散らして鳥が飛びたつ春の波涛を
水の中にみづのわたしがゐるやうに真夜中きみのシャツを洗ひぬ
花びらは一枚ごとに離(か)れゆきてすべてが春の読点になる
いつか終はるいつかは終はるその日まであなたの髪に花を預けて
ページ繰るたびに光が天井に反射してゐる きみのゐる部屋
そして春 頬紅を差しあつてゐる姉妹のやうにわらふ二人は

工房月旦にて、鈴木博太さんに2015年2月号の「よく冷えた〜」「胸腔に〜」の評をいただいています。