未来2015年7月号

換気扇のしたで煙草を吸ふきみが煙になつてゆくまでを見る
横断歩道渡りゆきたる鳩が尾を引き摺りさうで引き摺らぬまま
結末をなくした物語のやうな湖岸を日暮れ過ぎまでめぐる
ゆふやみを幾度も指の間より零し残りしものを夜とは呼ばず
一日の終はりにはづすネックレスこの世はすべて残照である
身じろぎもせず横たはるひとの辺に副葬品の眠りをねむる
唇をぢかに拭へば飲食はてらてらと手の甲に輝く
影ひとつ手にたづさへて歩みゆく夏の日傘はまつしろがいい

工房月旦にて、鈴木博太さんに2015年4月号の「国道を〜」の評をいただいています。