未来2015年9月号

いもうとと互ひの爪を比べ合ふまちがひ探しをしてゐるやうに
日曜を恍惚とねむる妹にふれふれ赤い砂、白い花
玄関の水辺にくるぶしまで浸かり父親が言ふ いつてらつしやい
これは違ふ星の重力 歪(ひづ)みつつゆるく何度も指を繋いで
磨かれた床に逆さの部屋はありさかさの我らその部屋に住む
花であるきみはすぐさま俯いてうつむくときの花のよこがほ
帰りきて入る浴室にシャンプーとコンディショナーが睦み合ふなり
ベッドから遥かに望むつま先はなんと儚い岬だらうか
君はもうよく眠つてることだらうベッドが舟に変はる頃には
三日三晩降り続く雨の日も君の瞳のなかで満ち欠ける月

みらいプラザ掲載でした。