未来2016年1月号

生きてゐるあなたはとてもさみしくてたましひにするやうな口づけ
剥き出しの肩を雨へと預けつつわたしはわたしの歩哨であつた
思ひおもひに僕らは川べりをあるき時をり星座のやうにすれ違ふ
戦または戦のまへの日々に降るボディーブローのやうな雨だね
離して書いた木と木のあひだに誰かゐてこちらに向けて手を振つてゐる
鶴もまた冬の弾丸そらにみつ大和の国を永く横切る
埋み火を胸に宿して眠り込む百年はながいながい熱(ほとぼ)り
 公刊『月映』II-1 「そこにのみかがやくひかり」田中恭吉
そこにのみかがやくひかり二人称の迷ひのなさで名前を呼べば