2015-09-12から1日間の記事一覧
一世かけて仕える人のをらずしてこの夜にただ跪くのみ 炎から生まれ炎へ還りゆくあなたをこの胸に眠らせる もつと上へ 鋭く細い嘴で天の喉(のみど)を掻き切るほどに まなうらにあなたを思ひ描いては炎のまへに目を瞑りたり 向かふ先をゆくべき道と思ふこと…
換気扇のしたで煙草を吸ふきみが煙になつてゆくまでを見る 横断歩道渡りゆきたる鳩が尾を引き摺りさうで引き摺らぬまま 結末をなくした物語のやうな湖岸を日暮れ過ぎまでめぐる ゆふやみを幾度も指の間より零し残りしものを夜とは呼ばず 一日の終はりにはづ…
瘡蓋のやうな旧姓剥がれずに呼ばれればまた立ち上がりたり 仕事場は六階マンションは五階 ひねもす春の空中に浮く みづからのはうへと向けて擦るマッチ 胸には容れることなきほのほ 夕映えはいつも後ろに手を振るがその貌をまだ見たことがない 流線を描くレ…
「スプリング・オブ・ライフδ」 木香薔薇の配線は入り組みながらすべての花を灯してゐたり にはたづみに降る雨のひとつ一粒が底の澱みを巻きあげてゐる さんずいのごとき飛沫を蹴散らして鳥が飛びたつ春の波涛を 水の中にみづのわたしがゐるやうに真夜中きみ…