2016-01-01から1年間の記事一覧

未来2016年3月号

見つめれば照り返しくる眼差しのおなじ深さの瞳に出会ふ 両の手を濡れた土より引き抜けば十指くまなく輝いてゐる 過去なんかどうでもよくてこの夏のまぶたに雨を享けてゐるだけ この胸にあるのは炎そしてまた憶えてゐないあなたが燃える ひらと舞ふ野火のや…

未来2016年2月号

さるすべりの花殻は手に溢れつつ悲しみをまたかなしんでゐる ふつつりと途切れた箇所から惜しみなく光を洩らすランドルト環 かたつむりは進化論の先端をゆく銀いろの航跡曳きながら いつしんに光をはじく鱗もつ海とは体躯のおほきな魚 その光その鋭さでわた…

第二十七回歌壇賞

第二十七回歌壇賞を受賞しました。 また、所属している未来短歌会にて2015年度の「未来年間賞」もいただいたことも併せてご報告させていただきます。 (日付を2月にしていますが、これを書いているのは2016年の5月のあたまです。昨年の11月半ばに受賞のお知…

未来2016年1月号

生きてゐるあなたはとてもさみしくてたましひにするやうな口づけ 剥き出しの肩を雨へと預けつつわたしはわたしの歩哨であつた 思ひおもひに僕らは川べりをあるき時をり星座のやうにすれ違ふ 戦または戦のまへの日々に降るボディーブローのやうな雨だね 離し…

未来2015年12月号

ひらめくやうな笑顔を思ひ出してゐる VANESAは蝶より生まれた名前 不定冠詞をえらんで発話するときの光を容れてあかるきのみど ここにゐない人を遠くへやることのリムーヴといふ静かな小舟 短歌とふうつはをしばしお借りしてわづかばかりの白湯を飲みをり 真…