未来2015年12月号

ひらめくやうな笑顔を思ひ出してゐる VANESAは蝶より生まれた名前
不定冠詞をえらんで発話するときの光を容れてあかるきのみど
ここにゐない人を遠くへやることのリムーヴといふ静かな小舟
短歌とふうつはをしばしお借りしてわづかばかりの白湯を飲みをり
真冬日にきみは帰りぬ 身体から火事の匂ひをほとばしらせて
きみの背を追つて素足で降りたてば婚とは露にむせぶ原野(はらの)か
届かない高さに腕を伸ばすときしばしを宙にとどまる踵
紙で切るほどの傷さへ負はぬままいつかわたしを裏切る人か

工房月旦にて、鈴木博太さんに2015年9月号の「いもうとと〜」を挙げていただいております。