いとへんのわたし

一年ほど前に知り合った友人とお酒を飲んでいて、ふと名前のはなしになった。まず、ずっと自信がなかった相手の名前の読みを確認し(男性名は要注意だ)、合っていたことにほっとする。そして、自分の名前のはなしになったとき、「あれ、いとへんなの?」と言われた。
どうやらその人は共通の友人からひらがなで名前を教わってしまったため、脳内変換で「彩乃」だと思ってしまったらしい。
まあ通り名として使っていることもあるしそこまで違和感はなかったけれど、一年ちょっとの間、この人の中では「彩乃」だったんだなあと思うと、想像上の生物が通りの向こうを歩いていったような、少し不思議な気分だった。

「渡辺さんですよね」と言われてその日から渡辺さんとして生きている(岡崎裕美子)