未来2014年7月号

「たつたひとつのバスタブ」
"WAKE UP AND SMELL THE COFFEE”(めをさませげんじつをみろ)鼻さきは湯気のさなかに湿りを帯びる
あふられる髪に視界はさえぎられ川の向かうに行くことがない
知つてゐる猫の姿に似てをればしやがみ込むなり鉢植ゑのまへ
つれだつて京浜東北線に乗るきみもわたしの知らない街だ
貝の舌が幾重にもさうしたやうに真珠ひとつを口にふくみぬ
パズルピースのやうなる日々を敷き詰めて一枚の画(ゑ)にたどり着かない
帆のやうに輪切りのレモン挿されたるアイスレモンティーわがまへに来る
胸にひらく扉の一枚いちまいに名前をつける アフエナ・ヘイアウ
海までのまつすぐな道をひとつづつ繋ぐ信号 手紙を書くね
草原にたつたひとつのバスタブを置いて遥かな雨を待ちたい

750号記念特集号。
工房月旦にて、大田美和さんに2014年4月号の「触れてゆくそばからわれを鍵盤にしてしまふ指、風の指さき」について評をいただいています。