未来2015年8月号

一世かけて仕える人のをらずしてこの夜にただ跪くのみ
炎から生まれ炎へ還りゆくあなたをこの胸に眠らせる
もつと上へ 鋭く細い嘴で天の喉(のみど)を掻き切るほどに
まなうらにあなたを思ひ描いては炎のまへに目を瞑りたり
向かふ先をゆくべき道と思ふこと戦野あらたな光を焚いて
ああきみは何のたましひ窓からの月の光に抜き身を曝し
目蓋をうすく隔てて見る夢を憶えてゐれば会へるだらうか
死の淵はまだおそらくは遠けれどをりをり浸すゆびの清しき
すべてのことを水に流して流されたすべてのものが待つ場所へゆく