「星座から見た地球」


「アクロバット前夜」の作者が今度は何を繰り出してきてくれるんだろうと楽しみだった。今回もやっぱりわからない、だけど、どうにかして理解したいと思う不可解さだった。作中にはABCDという4人(?)の子ども(?)が出てくる。4人はそれぞれ繋がっているようで繋がっておらず、ところどころに曖昧な糸が見え隠れする。
正直、この本の構成を知ったときは135ページと言えども読むのを断念しかけた。こんなめちゃくちゃな4人の状況なんか覚えてられないと思ったからだ。今は、ABCDそれぞれのメモを作りたいとすら思っている。彼ら彼女らがそれぞれに妙に切なくいとおしい。どうしたらこんな純粋のかたまりみたいな文章が書けるんだろう。

海とか山とか話には何度も出てきた。見ることができるだろうか。あたらしい家には出窓があっておじいちゃんがいて庭があるそうだ。大きな庭だそうだが海よりも山よりもだろうか。夏になったらかき氷はぜひとも食べたい。いつもDのところへとどくころにはすっかり話とちがうものになっていたから。両親は優しい人だとDは思う。もちろん礼儀正しく挨拶するつもりだ。何度か蹴ってしまったことは素直に詫びるつもりでいる。Dは気づいていないが一足先にDのことを両親は見ていた。今度のお子さんはあたまが大きいですなと担当医にいわれ苦笑したそうである。健康に生れてくれたらそれで十分と言ったのは母親だ。父親は元気かいとDに語りかけた。元気だよとDはいった。元気だってと母親がいった。(P108-109)