うたらば 第60回テーマ「入」

短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」 ブログパーツに、歌を採用していただきました。 いちもくさんに波打ち際まで駆け寄つてされどみづには入らぬひとよ 未来2013年12月号の「今月の一人」に載せていただいた歌です。モデルはさまよえる合宿のときのU山さ…

未来2014年4月号

「花箱」 父の背のやうなる坂をのぼりつめどうしてここが地獄だらうか ひざ立ちで迎へる春のゆふぐれにわたしよ胸をひらいて笑へ 触れてゆくそばからわれを鍵盤にしてしまふ指、風の指さき 見ひらいた眼に降る雨が眦をあふれるまでを草原に死ぬ くおんくおん…

うたらば 第58回テーマ「春」

短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」 ブログパーツに、歌を採用していただきました。 視界の端やぶられたかと思ふほど溢れくるなり菜の花の黄 未来2014年3月号に載った歌です。

未来2014年3月号

「射手座と春」 腕を伸ばしゆつくりと背そらしゆく我はいつかの戦場の弓 朝への弔ひとして底冷えの路上に落ちてゐる百合の花 奔馬ゆく一瞬のそのまなざしがわが胸底を照らしてゆけり 最奥に燃えつづける火 心臓と名づけたき炉をあなたは抱いて 対岸よ 手の届…

うたらば 第57回テーマ「服」

短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」 ブログパーツに、歌を採用していただきました。 裾をつまむ指さきそっと離されていまスカートを溢れだす花

うたつかい2014年1月号

うたつかい -短歌な月刊zine- 「季節ごとに君が抱える野の花を背骨のように大事にしたい」 金魚草せなかに隠し良心が疼きだすのを確かめてゐる 嬰児(みどりご)はまろき瞳でしんと見るタイム、セージ、ローズマリーを あらあらと女郎花折る姉さんは誰にもこ…

未来2014年2月号

「あやとりの川底」 魚たちが渦巻く午後の押し入れにひつたりと耳を寄せたまま待つ 冷蔵庫を満たして満たされることの星よりはやく欠けてゆく月 ゆつくりと小指で浚ふあやとりの川底にあるそのさみしさを 全身をくまなく濡らしわたしたち記憶のやうに眠つて…

第二十五回歌壇賞(候補作)

「歌壇」2014年2月号に、第二十五回歌壇賞候補作として「千の花(ミルフィオリ)」(三十首)を掲載していただきました。得点は道浦母都子さんからの二点と、今野寿美さんからの一点でした。たぶんみなさんとても気遣ってくださってあんまりおめでとうとか言…

未来2014年1月号

「春の柩(後)」 売店のビニール傘を購へば増えてしまひぬ遺品ひとつが 空にかほ隠しつつゆくわたしたちはかへすがへすも雨の標的 水の匂ひ満ちるからだの重たくて心をそとに引き摺つてゆく 動脈に絡め取られしこのからだ遠流の果てに沈みゆくべし 同じ高さ…

うたらば 第55回テーマ「横」

短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」 ブログパーツに、歌を採用していただきました。 曇天をよこめにけさは犬のため無塩のパンを焼きゐる店主 思うところがあって、最近は「未来」に載せたものも投稿するようにしています。これは2013年1月号「静かな革命…

未来2013年12月号

「春の柩(前)」 祈るやうに目蓋をおろすよこがほに深き耳孔うがたれてゐる 別れぎはは白くて広い昼下がりきみに娘のやうに呼ばれて 潮騒は胸郭のふちに満ちみちて溢さぬやうにきみを見送る 玄関の波打ち際のしづけさに裸足のあしを投げ出してみる 降る前の…

うたらば 第53回テーマ「目」

短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」 ブログパーツに、歌を採用していただきました。 ぬばたまの君の瞳は鳥であり他になにもない夏の休日

うたらば vol.08「田舎」

短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」 まさかまだ書いていないとは思わなかった…。ちょっと前の話になりますが、冊子に歌を採用していただきました。 東京はいいところねと繰り返す祖母がわたしを駅まで送る 妹はわたしのいない部屋に住みベッドの下を掃除…

未来2013年11月号

「それは花」 まだ君の声も知らないまひるまの列車の連結部のうへに立つ 咲く速さを枯れる速さが追ひこして花は盛りを通りすぎたり 煽られる髪を押さへて見送つた地下鉄の風 風のゆくすゑ 唇から漏れた気泡を追ふやうに空の水面を見つめてゐたり 真夜中をは…

うたつかい2013年9月号

うたつかい -短歌な月刊zine- 「黒ずんだこの庭にさえ薔薇は咲き素足で踏めば怪我をするのに」 片耳に開けたピアスは傷ついたあなたの何を塞ぐのだろう 忘れえぬ汗、風、涙、きみのその緑の瞳に光る七月(ふづき)を 強すぎて見えぬ光に目を閉じてまぶたを灼…

未来2013年10月号

「夕立ちよ」 夕立ちよ 美しいものことごとくこの世のそとに溢れてしまふ 花が降ることをあなたに言ふときに花降るとしか言へないことを 玉こんにやくの群れに右手を沈ませる不埒なことを考へたまま 腎臓に胞ありと告げられし日より水満ちる胞を抱きてねむる…

未来2013年9月号

「ゐない人」 見立てとは美しい森どこからか知らない鳥の声が聞こえる 遥かなる午睡の果てに泳ぎつくロングアイランドアイスティーへと 日溜まりは踊る あなたの爪先を十数センチ離れた床で まぶしさも眩暈もとうにうしなつて死ぬのはとてもさびしいことだ …

うたらば 第49回テーマ「夏」

短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」 ブログパーツに、歌を採用していただきました。 この夏のひとみな美(は)しくBCGの痕(あと)誇らしげに晒してゆきぬ

うたらば 第48回テーマ「数字」

短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」 ブログパーツに、歌を採用していただきました。 貯水塔の上で名前を呼びあえば二親等にもなりえる君だ 一回遅れてます。あとはてなブログにしたので、今さらですが、うたらばブログパーツをやっと付けることができま…

未来2013年8月号

「止まない雨」 止む雨と止まない雨を嗅ぎわける犬の襟首うしろより抱く 二人では溢れてしまふ風呂の湯のその過剰さをときに憎めり 貝殻の耳にくちびる近づけてさざ波のやうに歌つてあげる きみの眠るベッドを抜けて強風に倒れた自転車起こしにゆく 思ひ出は…

リチェルカーレのその後で

いや、まだ売っておりますけれども。こちら『眩暈リチェルカーレ』、内山晶太さんと師である黒瀬珂瀾さんにもお渡しして、ありがたいことに読んでいただきました。そして、Twitterでいただいたメッセージをこちらに載せさせていただきます。 飯田彩乃さんの…

うたつかい2013年7月号

うたつかい -短歌な月刊zine- 「夢、モノ・がたり」 きみの通つた記憶のKindergarten(キンダーガーテン)に永遠(とは)にましろき雪の降るゆめ 鴨川のカップルたちが引きあつた垂直二等分線の夢 軸足に体重を載せる投球のフォームのままにきみ殴るゆめ 段…

未来2013年7月号

「水の川」 水際のやうな月曜日を離り週末といふ対岸はみず 社屋から鳩の飛びたつ瞬間をペテン師の瞳で立ち尽くしたり かの土地をポスト・オフィスと呼ぶときに吹きつ晒しの原野はありぬ 真夜中に羅針盤うち鳴らしつつ踊り場のうへ踊るダンスを 憤懣はひどく…

初期作品集「眩暈リチェルカーレ」の初版分を売りきったので再版しました。

なんという雑なタイトルだろう… Twitterでさんざん告知をしまくったのでご存知の方がほとんどだと思いますが、「眩暈リチェルカーレ」という初期作品集を春先につくって文フリで販売しました。2010~2012年に飯田彩乃がつくった短歌133首を収録しています。 …

うたつかい2013年4月号

うたつかい -短歌な月刊zine- 「港(ハーバー)にて」 秘密裏に春の径(こみち)をひたひたとゆけばひかりは雪を真似する 水の面(おもて)みずの裏より眺むればなべてこの世はあやうく揺れて 君はきみの過去を泳いできたんだね ほとりの足跡(あと)は乾か…

うたらば 第47回テーマ「強」

短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」 ブログパーツに、歌を採用していただきました。 わたくしの指も噛み切れないくせにあなたが持っている強い牙

未来2013年6月号

「ふもとに眠る」 部屋といふどこかちひさき水槽のオブジェの内にあなたは住まふ あしの指の先よりみづに浸すときこゑを聞きたり くるしき水の 踵よりやはらかき水したたらせ春のゆるみよいづこより来る 水紋のごとくシーツの広まりて眠りの岸へ辿り着きたり…

未来2013年5月号

「庭のこと」 花の庭 わたしが探してまはるのはゾーリンゲンのあのばかのこと わたくしは遂にほどけぬ蛇(くちなは)の子どもを捨てにゆくところです この庭に巻き貝が埋もれゐることのこはさをきみに全身で言ふ 足もとの泉が映さないものに気づかず君はその…

うたらば 第46回テーマ「金」

短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」 ブログパーツに、歌を採用していただきました。 アイス売りの声すれば夏の五時がきて金曜日なら笑み交わしあう

うたらば 第44回テーマ「飛」

短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」 ブログパーツに、歌を採用していただきました。 世界ってけっこう広かったんだって飛んだその瞬間に気づいた